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『美穂子』は、大学時代から付き合い、つい最近まで同棲していた彼女だ。
地味で目立たなく、お世辞にも美人とは言えなかったが、心優しく家庭的で、何より俺の一番の理解者だった。
就職活動に失敗し、バイトで食いつないでいた頃も献身的に支えてくれ、先に就職した美穂子が養ってくれたようなものだった。
しかし、いつ頃からか、知らず知らずのうちに俺らの関係は変わっていった。
それは、どちらが悪いとか、そういうものではなく、自然の流れだったのだから、仕方ないと思っている。
美穂子は変わってしまった。
献身的すぎて、女性と言うよりかは、母親のような、魅力のない同居人と化してしまったのだ。
俺はそれに耐えられなかった。
もっとときめいたり、ドキドキしたりしたかった。
バイト先の社長に気に入られ、正社員になれた俺は、もう、独り立ちというか、美穂子から卒業する時期だったんだと思う。
職場では一生懸命働いた。そしてそんな俺に憧れてくれる、尊敬の眼差しで見てくれる、可愛い同僚がいた。
その子は俺の癒しだった。俺より3つも若く、可愛くてちょっと頼りないところもワガママなところもよかった。
女性としての魅力も充分で、何より体の相性も抜群だった。
もう、美穂子と暮らしていく理由なんて、これっぽっちも見つからなかった。
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