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 しょーがない。『主』の電話が終わるまでこのままでいるか……とも思ったけどそれだとやはり暇なので、じゃれ合い(いつもの)に移行する。自由だった手で“犬”の頭を、たすたすっ、と軽く叩いた。それを続けていると、受け続けていた“犬”が耐えられなくなってアタシの手を止める。アタシは止められた手をほどいて叩く。“犬”が止めにかかる。アタシは止まらず叩く。“犬”が止めにかかる。アタシは叩く。“犬”が止めにかかる。なんてのを繰り返していると── 「…………仕事だ」  低い声で『主』が言った。  アタシも“犬”も、じゃれ合いの手を止める。 「獲物は?」  床に寝転がった状態のまま訊く。 「あぁ、いや、今回はメインじゃないよ」  ん。  って、ことは。 「……護衛……?」  “犬”がぼそりとアタシの代わりに呟くように言った。  アタシたちの仕事はメインとサブがある。  メインが暗殺で、サブが護衛。  そして、護衛となると大概は『主』が会議だかパーティーだかに参加するときの身辺警護になる。 「なんかあんの?」 「ちょっとしたパーティーに招かれた、ってとこかな」 「ふぅん……。で、いつ?」  確認しながらアタシは“犬”の下から這い出して、床に伏せた状態の“犬”の背に乗っかった。  “犬”の体に対して十字になるように上体を預ける。 「今夜だよ」 「ん、オッケー」  アタシは手を上げて了解の意を示した。  “犬”もこくこく、と頷いて了承を示した。  パーティーか。  色んな人間が見られるから楽しみなんだよなー。  会議の時はいつも同じ面子だからつまんないけど。 「あ、それから」  『主』は付け加えた。 「私の息子も行くからね」  ──は?
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