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 おおう。  ちょ、これってセクハラじゃね?  尻とかケツとかさわんじゃねーよ。  不愉快MAXに全力で暴れてやろうかとも思ったが、やめた。このアタシを誘拐する時点でこれは普通の誘拐じゃねぇことは明白だ。身代金とか請求するための交渉材料として、なんて話じゃねぇわけだ。だったらこのままどうなるか事の成り行きを見てやろうじゃないの。誰がどんな目的でアタシを誘拐したのかその面と理由を拝んでから暴れてやっても遅くはねーだろうし。今アタシを担ぎ上げて運んでいる二人は主犯じゃなさそうだしな……てか絶対『誰か』の部下だよな。  とかなんとか考えているうちに、どさり、と手荒に下ろされた。  雑な下ろし方すんなよな……しかも仰向けにまんま下ろしやがって。倉庫の天井しか見えねーじゃねーか。  そう思って腹筋で上半身を起こすと。  うおっ。  さっきの二人とは雰囲気の違う男が目の前にいた。典型的っていうかお約束っていうか……そいつは積み荷らしい木箱の上に座っていた。  こいつが主犯か? 「……口を外してやれ」  男が静かに(偉そうに)命令すると、強面の方がアタシの猿ぐつわを外した。 「……ッは」  うぇー、口ん中がスゲー変な感じー。  そうやってうぇうぇやっていると。 「お前が“猫”だな?」  と、確認された。 「うん。そうだけど」  口ん中の違和感に喋りにくさを覚えながらアタシは答えた。  ん。やっぱりアタシのこと知ってるやつだったか。アタシを、アタシの存在とその呼称を知ってるってことは、同じ業界のもんか。  同じ業界──暗殺業。  同業者──暗殺業者。  ってことは、主のライバルか何かかな? 「お前は?」  そう、アタシが訊き返すと。 「口の利き方に気を付けろ!」  アタシの側に立っていた強面が吠えた。  おぉ、こわ。  しかし、主犯(っぽい)男はそれを手で制すようにした。そして、アタシの問い返しは無視してくれちゃうようで、 「いい。むしろ、そうでなくては困る」  と言って不敵に笑った。  ……んー…………ん。よく分からん。  なんで同業者がアタシを誘拐するんだ? アタシの主──同業社の業績(戦力)を削ぐためにアタシを抹殺する……しようとしてるなら分かる。が、目の前に腰掛ける男にそんな気配は全く無い。
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