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どころか。
細面と強面のスーツ二人、そいつらがアタシに向けている激しい殺意と静かな殺意を、この主犯(かもしれない)男は制している。
アタシを殺さないでいる現状と主犯(かもしれない)男の発言からすると……。
目的は──このアタシか。
ふむ。
「アタシに何の用だ?」
普通に訊いた。
スーツ二人の殺気が増したが、気にしない──と言いつつ別の意味でなら気になってるが。だってなんか……こいつらさぁ、性格の真逆さが助さんと格さんみたいなんだよなぁ。……よし、向かって右の激しい方を助さん、左の静かな方を格さんと呼ぼう。
「……目的は達した」
主犯(かもしれない)男が短く言う。
は?
なに?
目的は達した?
「ちょっ、どゆこと?」
アタシに用事とかないの?
てっきり「うちで働かないか?」的なことを言われるもんだと思ってたけど。交渉されるもんだと思ってたんだけど。
「お前との会話など必要ない。そんな余地など無く──お前は俺の道具になる」
そう、主犯(決定!)の男は断言した。
しかもアタシの疑問に答えているようで答えてねぇ。
しかし、今の言葉で目的は分かった。アタシを手駒として労働力として戦力として欲していることは分かった──けれど、普通(?)こういうのって、交渉とか条件とか挟み込んで契約する、みたいな感じになるんじゃないの? そんな商談みたいなものはないの? なぁ?
「道具に交渉など要らんだろう」
あらやだ素敵な思考と感覚の持ち主ね。こうも堂々と『道具』扱いしてくれるとは。
アタシは体の力を抜いた。運ばれて下ろされた時の状態に戻り──倉庫の天井を見た。
さて、どうしたもんか──と、再び考えてみる。
アタシを誘拐したヤツの面と理由は拝めたから、あとはここからどうするか──
──ってか、決まってるけど。
全力で暴れてやろう。
まずはこの両手に掛けられた手錠から、力任せにぶっ千切った。輪っかは手首に残ったものの、自由にはなった。足は……このままでもいいか。
さぁて、ひと暴れして主のところに帰ろう──
と。
不意に倉庫の外に気配を感じた。
「主?」
間違えることはない、『主』の気配がする。
その側には“犬”の気配もある。
アタシが二人分の気配を察したと同時に、倉庫の扉が開けられた──というか壊された。
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