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そしてそこに現れたのは──細身の男と図体のデカイ男──もちろん、細身の方が『主』で、図体のデカイ方が“犬”だ。どうやら倉庫の扉は引き剥がすように壊されたようで、その証拠に“犬”は引き剥がした扉を手に持っていた。
「──やれ」
通りのいい『主』の声が聞こえるのと同時に“犬”が動いた。
手にしていた扉(もはや鉄の板と化している)をこちらに投げる。狙いは主犯の男と助さん格さん。と、同時に駆け出し“犬”はアタシのところに来た。
「…………」
何でか睨まれた。
“犬”は何も言わずにアタシを担ぎ上げ、そしてそのまま──放り投げた。
「ちょっ──」
慌てて受け身を取ろうと着地点を確認する。投げられた先に『主』が居た。ギクリとして“犬”のバカヤロウと心中で罵った。『主』に向かって投げるやつがあるかぁ!──結局まともな体勢を整えることは出来ずに──
──アタシは『主』の腕の中に収まった。
「……悪いのは“犬”だからな」
「悪いのはお前の方だよ、“猫”」
アタシの反論に、『主』は爽やかな笑顔で応じる。
あ、怒ってるわ。
笑顔から逃げようとアタシは『主』から顔をそらした。
「あー……」
そらした先の光景を見て、思わず声をもらす。
“犬”が片付けを終えてこっちに戻ってくるところだった。
「なんか……あいつ、気が立ってる?」
なんとなくそんな感じがしてアタシは『主』に訊いた。
「お前のせいだからね?」
『主』が笑顔で答えた。
なんか……二人して恐い。
「さ、帰ろうか」
“犬”がこちらに来るのを待ってから、『主』はアタシを抱えたまま先導して歩き始めた。向かった先には一台の車があって、“犬”が後部座席のドアを開けると、『主』はアタシを抱えたまま乗り込んだ。“犬”は不機嫌な表情のまま、運転席に乗り込んだ。
え? このままなの?
「『主』」
「屋敷に着くまでこのままだからね?」
「…………」
口答えは許されなかった。
沈黙でみたされる中、車は発進された。
……道中、なんで居場所が分かったのかチラリと訊くと、「“犬”の鼻と防犯カメラ」との答えが返ってきた。……割り出し方が警察だな……と思ったのは口に出さなかった。
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