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「『主』」
ばんっ、と。
アタシは『主』のデスクに勢いよく両手をついて、正面から『主』を見据えた。
「ん? なんだい?」
執務中だった『主』が、緩やかに書類から顔を上げる。
「こいつをどうにかしてくれ」
アタシは、ビッ! と、親指を立てて己の背後を指した。『主』はアタシの状況を見て、
「あぁ、仲良しだねぇ」と目を細めて微笑んだ。
いや……そんな感想が欲しい訳じゃねぇんだけど……ねぇんだけど!
くっ、でも『主』の(怒ってない時の)笑顔は大好きだ!
…………っ、じゃなくて。
『主』に訴えたいアタシの今の状況。
“犬”(身長百八十越えの男)に服の裾をぎっちりと掴まえられている上に、カルガモの雛のように付きまとわれている現状だ。
それも。
ここ数日フルタイムでこれだ。
アタシのライフペースに関わらずついてくる。
「『主』から言ってくれよ、離れろって」
その一言さえあれば、“犬”はアタシから離れてくれるんだからさ。
「それは出来ないよ。仕事に差し支えるからね」
『主』は笑顔でアタシの訴状を棄却した。
「それに別にいいじゃないか。『バディ』なんだし、お互いの距離が近い方がいいだろう?」
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