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物理的にもね──と、『主』は加えて言う。
いや。
いやいやいや。
「いくらなんでも近すぎだろ」
「今回のことで、“猫”にはこれくらいしないとダメなんだと学んだんじゃないかな。ねぇ? “犬”」
『主』がそう話を振ると、“犬”は黙ったままで頷いた。
「また誘拐されるかもしれないしね」
続けて『主』が言ったその言葉に、“犬”は何度も頷いた。
そんなに頷くな。
それにそうそう何度も誘拐されてたまるか。
「──そういえば、先方から御礼状が届いていたよ」
『主』は今思い出したようにそう言い、デスクにある書類の間から封書を手にとり、アタシに見せるようにした。
「先方?」
って、どちらさま?
「お前を誘拐したあの三人が属していた会社だよ」
「ぁあーぁ」
あいつらのか。
見ると、封書には社名が印刷されていた。
『主』のライバル会社だった。
んー、あの態度とあの人数構成(一個人に対して二人の側付き)からするに、社長か何かと思ってたけど……違ったのか。ふぅん。それにしても、御礼状なんてものをわざわざ送ってくるとは……。
……うん? ちょっとまて。
「それ、ホントに御礼状? 詫び状じゃなくて?」
そこは普通、迷惑かけてすいませんでしたっていうお詫びじゃないの?
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