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「はやく海入ろーぜ」
そわそわした様子で旭が行った。それを皮切りに、四人は海に向かって走り出す。
賑わったビーチに弾んだ声が響いた。
水をかけあったり、ビーチバレーをしたりしてひとしきり遊ぶと、砂浜に腰を降ろした。
喉の渇きをおぼえて、莉那は立ち上がる。
「わたし、飲み物買ってくるね。みんな、何がいい?」
「アタシ、ラムネ!」
「オレはコーラ!」
菜々美と旭が口々に自分の所望の品を宣言する。しかし、怜司だけはむっつりと黙ったままだった。
「氷上くんは何にする?」
もういちど尋ねると、怜司は無言で立ち上がった。
「一人じゃ重いだろ。俺も行く」
「え、いいよ。わたしこう見えても力持ちだよ」
「いいから。行くぞ」
ナチュラルに手を握られて、莉那はどきりとした。
半歩前を歩く、切れ長の瞳の大人びた横顔は莉那の目にも格好良く映る。
彼に好意を抱いているわけではないが、男子との接触にあまり慣れてないせいか、頬が熱くなる。
「あ、悪い。セクハラだよな」
莉那が無言だったのを責められていると感じたのか、少し慌てたように怜司が手を離す。
それがなんだか初々しくて、クールな容姿とのギャップを莉那は微笑ましく感じた。
「いいよ、手くらい。ぜんぜん平気。手伝ってくれてありがと、氷上くん」
「怜司でいい。俺も莉那って呼んでもいいか?」
「もちろん!」
ちょっと前まで少し余所余所しかった怜司に名前で呼ばれて、嬉しかった。
なんだかぐっと距離が近付いて、もうすっかり友達になったような気がして、莉那はジュースを買いながら積極的に話しかけてみた。
怜司は意外にも笑顔で会話に応じてくれて、飲み物を持って帰る途中、意外にも話が弾んだ。
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