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仲睦まじげな様子で戻ってきた莉那と怜司を見て、旭が眉間に皺を寄せる。
「おい、怜司。近いっつーの。リナにベタベタすんなよ!」
莉那と怜司の間に旭が割り込む。
怜司が呆れたような表情を浮かべた。
「いいだろ別に。お前の恋人は菜々美だろ。莉那と俺が仲良くしてて、何か問題でもあるのかよ?」
「あるに決まってんだろ。リナはオレの幼なじみだぞ。気安くすんなよ、女たらし」
「俺がいつ女を誑かしたんだ?」
「いつもだ。オレのクラスの女子が言ってたぞ。お前に見詰められて妊娠しちゃいそうだったとか」
「見詰めただけで妊娠するか、馬鹿め」
「バカっていうな!いいか、リナ。怜司はやめとけ。遊んで捨てられるぞ」
必死に莉那と怜司を引き離そうとする旭に、クスクスと菜々美が笑い声を上げる。
「やだもー、旭ったら、莉那のことダイスキなんだからぁ!もしかして旭、昔、リナのこと好きだったりして」
冗談めかした菜々美の言葉に、旭は当然笑って「リナなんて男勝りだしお節介だし、母ちゃんみたいなもんだって」と答えると莉那は思っていた。
昔から仲のよさをからかわれると、旭はいつもそう答えていた。
だけど、旭は虚をつかれたような顔で押し黙ってしまった。
口を噤んだ旭の顔が存外真面目で、莉那は思わずドキリとしてしまった。
莉那は顔が赤くなりそうなのを必死に堪えた。
ここで赤くなったりしたら、菜々美に申し訳がたたない気がしたからだ。
鼓動が耳の奥でドクンドクンと煩く響いている。
自分の気持ちが押さえきれなくなりそうになって、莉那は「トイレいってくる」と逃げる様に輪から離れた。
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