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「莉那ってさぁ、ほんと、旭と仲いいよねぇ。いいなぁ、幼なじみ。妬けちゃう」
旭と別れて自分の教室に入るなり、菜々美が悩ましげに溜息を漏らした。
「やだ、菜々美ったら嫉妬してかわいいんだから。大丈夫、わたしと旭はただの幼なじみだよ」
なるべくあっけらかんとした態度をとってみたが、菜々美の顔は晴れない。
「幼なじみって、いちばん恋に落ちそうな関係でしょ」
「そんなことないよ。近過ぎて、異性だって思えないもん」
「莉那がそうでもさ、旭がそうとは限らないでしょ。莉那、超カワイイし。その銀髪、天然でしょ?目が青いのも羨ましい」
羨望の眼差しに内心苦々しい思いだった。
銀色のショートヘアを指先で摘まみ、菜々美に聞こえないようにそっと溜息を吐く。
母がドイツ人でハーフの莉那は、日本育ちだけど外国人みたいな色素をしている。
細い銀糸に氷色の瞳。今では羨ましがられるけど、幼い頃は容姿のせいでよくのけものにされたのだ。
強がりだった莉那は何を言われても気にせずにいつも笑っていたけど、子供の世界は残酷で、莉那は人知れず泣いたことも少なくなかった。
旭だけはいつも味方でいてくれた。
旭の髪は赤茶っぽい色をしていて、自分と似たような経験をしていた。それでも、彼は自分の色を恥じることなくいつも毅然としてた。
そんな彼に励まされ、莉那も小学校に上がる頃には薄い色素を、心から気にせずに過ごせるようになったのだ。
「目の色や髪の色なんか関係ないよ、女の子は性格がかわいくなくちゃ。わたしの性格知ってるでしょ?サバサバして男っぽいって」
「そうだね、確かに、莉那って見かけに反して男子っぽいとこあるよね」
「でしょ。菜々美のほうがずっと可愛らしい女の子だよ」
「そっか。そうかもしれないね」
菜々美が顔を綻ばせたので、莉那はホッとした。
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