檸檬の雫

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「ねえ、夏休みさ、アタシと旭と莉那と怜司の四人で海いかない?」 机に肘をついて菜々美が上目遣いで見上げてくる。 甘えたような顔が可愛らしくて、同性にも関わらず莉那はドキリとした。 彼女はよく「莉那ってマジ美少女だよね。きれいな白猫ってカンジ」と言うけれど、彼女の方が、垂れた丸い瞳がポメラニアンみたいでかわいいと莉那はいつも思う。 「海かぁ、いいね、海。だけどさ、旭はともかく氷上(ひょうじょう)くんのこと、よく知らないよ」 「大丈夫、怜司(れいじ)ってクールで近寄りがたいけど、紳士で意外とオープンな性格だから」 菜々美の言葉に、莉那は眉を顰める。 怜司は旭と同じクラスの男子で、クールで耽美系な見目のモテ男だ。 旭と仲がいい(本人たちいわくライバルで友人ではないそうだが)ので、何度か会ったことはある。彼に関して印象に残っているのはいつも引き結んだ唇で、会話をしたことはない。 「オープンな性格ね。そう見えないけど」 「平気だって。アイツ、莉那に気があるみたいだし」 唇の端を吊り上げる菜々美に、莉那は苦笑を浮かべた。 明確な返事を避けたけれど、結局、その日の夜に菜々美から送られてきたラインで、四人で海へ行くことが決定した。
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