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 ずいぶん力技なやりかたで、美由たちはその場をあとにした。  残されたのは、ファノンと、あたしと、ヴィミニー。 (ヴィミは既に失格が確定している。)  試験の残り時間はあと二十分だ。  ファノンが戸惑いながらもロを開いた。 「アタシ、里沙の気持ち受け取った。これで願いかなえれる」  一歩前へ進み出て、空中に魔法陣を描いて呪文を唱える。 「エルリタ、アルニタ、メルデローツ。メイ!」  光の束が去った四人~三体と一人~を追って走っていった。  四人で末永く幸せに暮らせますように、か。 「まんまだね」  ヴィミに言われて、 「黙れ失格者」  あらためてあたしを振り返る。 「ファリハはどうすんの?」  あたしは…… 「ちょっと思うとこあって……このまま学園戻る」 「えーっ!?」 「ファリハ失格になっちゃうよ!?」  それでもあたしが飛びたつと、二人はあたしを追ってきた。  二十三時間五十分十七秒。  ことしの魔法試験が終った。  あたしはうかり、ファノンは落ちた。  ファノンはうかれた筈だった。  あの一点を見失わなければ。 「どういうことよ!」 「あの三人、人間じゃなかったんだよ? 設問は何?」 「二十四時間以内に……」 「人間を一人幸せに……あ!」  さすがファノンはすぐわかったらしい。 「そこかぁ……」 「どこ」 「そんなだからヴィミは落ちンだよ」 「それをゆうなあっ!」  二人のドタバタを横に見ながら、あたしはメレディーツのことばを思い出していた。  よく事態を見極めましたね。  そう、人間ではないとはいえ、杖もちゃんとささりましたし日常行動は完全に人間でした。  人間と判断してもよかったのです。  でもあなたは、そこに人間と異なる何かを見つけました。  杖がグロウロイドにささった人のなかで、合格したのはあなただけでした。  広い視野こそ魔法使いの基本です。  精進なさい。  合格者を示す漆黒の大マントが風に翻える。  ヴィミニーの魔法が失格後もそのままなら、ファノンのも効いてるはずだ。  美由。  立木。  桜井。  どこでかはわからないけれど、きっと三人は、少なくとも立木は幸せになれる。  願わくは、三人とも…  秋色の風の中で、あたしは少しだけほほえんだ。  風にはかすかに冬の匂いがした。  ほんのかすかに。                 完
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