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「仲直りさせれば幸せになるんじゃない?」
友情修復魔法一発で全解決?
それも確かに幸せっぽいけど……
ファノンはすっかりその気だ。
「仲直りの魔法かけるよ。エニウスハルファーハルモルテネレヌ…」
「だめえええっ」
『エトウ』で完呪文だったけど、どうにか防いだ。
「何で止める」
「簡単すぎる。今年の設問メレディーツだよ。こんな簡単なわけない」
「メレディーツだってたまには簡単な問題出すでしょお」
ファノンンンーっ。
このお気楽魔法使い(未満)っ!
「とにかくこれは絶対引っかけだ。この食い違いのもとがある筈だよ」
と、デスク上を食い入るように見つめていると、3Dスタンドのスイッチが切ってある。
立木里沙はこっちを見ていない。
今がチャンス。
スイッチをオンにすると、きれいな3Dフォトが立ち上がった。
立木と美由と男が一人、一緒に映ってて、三人楽しげに笑っている。
と、立木が気づいてスイッチをオフした。
「オートにしてたっけか?」
そこに生徒が入ってきた。
「先生指切ったあっ」
「だから彫刻刀は気をつけなさいって……」
ガミガミ言いながら立木が手当てをしてる間に、外してあった指輪フォンの着信履歴に目を通すと、桜井通、桜井通、桜井通、桜井通、桜井通、桜井通……
同一着信が二十七件もある。
一通返すと、すぐ先方が出た。
「里沙。よかった、式場予約今日までなんだよ。このままだと流れる…聞いてんのかよ。里沙? 里沙っ?」
切ってやった。
ネタは挙がってんだ! の気分。
あたしはファノンと顔を見合わせ、頷き交わしてそこを出た。
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