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三
ヴィミニーが立ち去り、あたしとファノンが残された。
「あれがヴィミの答え? 正解?」
正解かどうかはわからない。
あたし的には答えの出し方が簡単すぎると思えたけど。
「とにかく部屋、入ってみよう」
美由のマンションは高層で、小ぎれいで、本人と同じに味もそっけもなかった。
女二人はあろうことか、二人一緒に入浴していた。
広めの、細長い浴槽の中に二人並んで体育座りみたいな格好で湯に浸かっている。
「まだ気が晴れない?」
立木が聞く。
「晴れない」
初めて聞く、美由の声。
少しハスキーで暗めだが、きれいな声だ。
「泣いてわめいてたんだよ。惨めに。ハンサム台なしで。でもだめなの?」
「駄目とかじゃなくて……」
初めて美由は立木を正視した。
「何で寝たりしたの?」
「それは……桜井を信じさせるため……と……」
後半がじっと小さくなる。
「と?」
「男って……どんなもんかなって……」
「だと思った。あなたまだ覚悟ないのよ」
美由がツンとソッポ向く。
あたしは息をのむ。
感情のある美由が、こんなにやわらかく美しいとは。
では学校での、氷のような石のような美由は何?
美由はいったい何なの?
「ユリだよユリ。あの二人できてるんだよ」
ファノンは確証を得たように言い切る。
そうね、近いかもしれない。
でもまだ違う可能性もある…
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