第二話 『世界の願い』

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 「わかったよ。」  だから――――の先を聞く前に俺は答えていた。  彼女の話は感情論に近い。  そこに明確な根拠はなく、納得できたわけではない。  ただ、強い想いは伝わった。  そして何よりも、  君じゃなきゃダメなんだ――――――  その一言が、俺を奮い立たせた。  その言葉の真意はわからない。  もしかしたら、単なる演技だったのかもしれない。  それでも、その一言が、初めて言ってもらえた、その一言が何よりうれしかった。  だから俺は、彼女の期待に応えたいと思った。    「ありがとう。」  彼女は最初に見せた微笑みとは違う、どこか安心したような柔らかな笑顔で俺に言った。  その後は、これから行く世界について彼女から説明を受けた。  説明といっても細かい部分を説明するには時間が足りないらしく、簡単なことだけを教えてもらった。  まず、今から行く世界には、多くの種族が存在すること。  種族によってそれぞれ特徴があり、できることも異なるということ。  そして、魔法や加護が存在すること。  その源になるエネルギーが生源(マナ)であること。  他にもいろいろなことを教えてもらったが、基本的には現地で学んでいくというスタイルのようだ。  ちなみに、言語については心配しなくてもいいらしい。  それについては疑問だったが、言葉が通じるほうが楽なので、深く考えないようにした。  説明が終わると、最期に彼女から贈り物をもらった。  その贈り物とは、3回限定の世界(カノジョ)に対する命令権だった。  命令によって、自分に有利になるように世界を操作できる切り札。  慎重に使わなくてはいけない。  「準備はいいかな?」  彼女は俺に問いかけた。  「ああ。」  俺は一言で返した。  それに彼女が頷き、俺に両手をかざすと、無数の光が俺を包み込んでいった。  最後に彼女は、目の前に広がる無数の光よりも綺麗な笑顔で、  「いってらっしゃい。」  そう言ったのが聞こえた。
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