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01.幼馴染で先生で
朝、玄関にかかっている鏡で全身を念入りにチェックする。寝癖なし、グロス代わりに塗ったリップははみ出してない、スカートも注意されない絶妙な長さに折ってある。
「美優―! いつまで鏡見ているの! 早く行きなさい!」
お母さんが怒っている声が聞こえるけれど、今日は一時間目が数学なんだもん。仕方がないじゃない。
「よし、これで大丈夫! いってきまーす!」
最後に毛先を指でくるりと丸めると、なんちゃってパーマみたいにして私は家を飛び出した。
学校までの道のりを一人で歩く。本当は、幼馴染で同じ学校に通うたもっちゃん――藤原保君と一緒に行きたいんだけど、その願いは一度も叶わずにいる。
たもっちゃん曰く、生徒と教師が一緒に通学はマズイ、とかそもそも私が行くのが遅すぎて職員会議に間に合わないとか……。とにかく、いろんな理由をつけて一緒に登校してもらえずにいる。
まあ、一番の理由は、他の生徒に示しがつかないってことなんだろうけど……。
「先生と一緒に登校したって、別にいいじゃんね……」
はぁ、と私はため息をつく。そう、先生なのだ。たもっちゃんは私の通う中学で教師をしていた。
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