一学期 第1頁 魔王、勇者と再会する 

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 成長してから、元の世界に戻る方法を見つける。  そう決めた俺は、それまでは人間として生活することにした。  魔王が人間の世話になるなんて、前代未聞だが、  俺は少し、人間の生活に興味があった。  実際に人間として生活することで、何か新しい発見があるかもしれない。  そして、人間に対するイメージも・・・・・・  いや、俺は魔王だ。  そう簡単に、俺の感性が変えられることはないだろう。  しかし(2回目)  またしても、俺の予定は崩れ落ちる。  人間の生活に嵌ってしまったのだ。  魔王だった俺が、人間を敵視していた俺が、  人間としての毎日に満足してしまった。  その原因は、俺のこの世界での両親だ。  俺の両親は、世間一般で言うところの普通の人間だった。  目立つ才能も、特徴も特にない。  ただ、そんな両親には、他よりも強い部分があった。  それは愛情だ。  俺に向けられる愛情は、紛れもなく本物の想いだった。  そして、互いへの信頼。  俺の知る人間とは思えないほど、愛情の塊だった。  (やりづらいな・・・・)  はじめはそう感じていた俺だったが、  いつも変わらず、俺に愛情を注いでくれる二人に、次第に心を許していった。  終いには、そんな両親が誇れるような子になろうとまで思うようになっていた。  その結果、俺は魔王だったときの知識、経験をフル活用し、学業やスポーツ、全てで天才と呼ばれるほどになった。  魔王としては失格かもしれないが、  俺はこの生活に満足していた。  だが、それでも  あの時の約束は、一度も忘れることは無かった。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
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