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夜。 三日月に星がきらきら控えめにまたたく。 見事な月夜だ。 「ただいまー」 仕事を終えて、玄関に入った途端 「おかえり!!」 「おかえりー!!!」 娘と息子が私の元に駆け寄ってきて 「パパー!!おつかれさまーっ!!」 「パパー!!だいすき!!」 ぎゅーっと私のすねのところに抱きつく。 その勢いで、ずれたメガネを直しながら、 「おいおい、そしたらパパが動けないだろう」 と言って、笑う二人の頭をなでる。 「くすぐったい!!」 「パパ優しい!!」 2人は目を細めてにこにこしている。 リビングへ進むと 「おかえりなさい、あなた」 美しい妻がキッチンに立っている。 料理をしているようだ。 「今日はお風呂にします?それともごはん?」 「ごはんで頼むよ」 「今日は肉じゃがに、お味噌汁、生姜焼きよ」 ふふっ、と笑う妻は、胸が僅かにきゅんとときめく。 結婚して10年。 妻の美しさは、衰えるどころか年をとるにつれてますます磨きがかかっている。 大人の女の魅力が、ぐっと増した。 「ありがとう」 と礼を口にし、ジャケットを脱ぎ妻に手渡すとダイニングへと向かう。
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