49人が本棚に入れています
本棚に追加
今、息が出来ないほどに煩悶しているのに、光揮はそんな私のこと、知らないんだよね。私、信じて待ってたのに。光揮のこと、ずっと待ってたのに。
心が沈んでいってしまった。重くて暗い泥沼の底。光揮と暮らした家に居続けるなんて、今の私には耐えられない。荷物をまとめて実家に帰ってしまおうと、無理やり体を動かした。
着替えと、通帳と、大切な物の数々。普段持ち歩かないサイズの鞄に詰め込んでいく。そして私がふと意識を向けた先は、アルバムが入った引き出しだった。
開けてしまえば中を見るだろう。そして現実を思い出して今度こそ号泣してしまうだろう。留まろうとしたけれど、私の手は引き出しへと伸びていた。
『美春へ』
引き出しを開けると最初に目に入ったのは、茶色い封筒。こんなもの、いつからあったのか。懐かしい光揮の文字が、輝いて見える。たったそれだけで私の視界は、揺れていた。
恐る恐る封筒を手に取って、開封する。中からは手紙が2枚出てきた。私は目元を拭って、思い出に浸るようにゆっくりと読み始める。
最初のコメントを投稿しよう!