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「断る。俺たちはお前の能力を利用したくて来たんだ」
明らかに不利なはずの盗賊の上から目線な言葉に、どこか不穏なものを感じながら冷たい口調で言い返す。
「黙れ、今すぐ去らないのならこの森の養分となってもらう。」
言いながら養分ってなんだよ……と自分でも思ったが、盗賊は冷や汗を浮かべ初めている。極力剣でのぶつかり合いは避けたいのだ。俺は相手が動けないのは分かっていながらも、一応少し距離を離す。しばらく睨み合いが続いていたが、ふと盗賊が視線を外すとニヤリと笑い、俺に忠告をするかのように話しかけて来た。
「このまま睨み合いをするのも勝手だが、果たしてそのままでいいのかな?」
「はぁ…このまま去ればよかったものを、多少手荒なこと…」
諦める様子のない盗賊に、俺は実力行使で多少黙らせようとした。しかし、俺が言い終わるまえに盗賊がポケットからなにかの玉を取り出すと、俺の足元に投げつける。次の瞬間、瞳を焼くような明るさに目を奪われ、何も見えなくなった。
「しまった!」
今まで足音を消して移動して来たのだろう。いつのまにか背後へとやってきた2人目の盗賊はゼベに斬りかかろうとしていた。
「なんてね」
俺は剣の柄を逆手に持つと、槍投げの要領で体を絞り盗賊めがけて投げつける。森と意識を共有していた俺は、剣を投げられる射程圏内に2人目が来るまで待っていた。目は見えなくとも、敵は視える。
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