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ん?俺は自分の家に異変を感じて目を凝らす。外観自体は何も変わっていない。なのに何かが欠落したように感じるのは一体何故なのか…。俺は理由のわからぬ不安が心を満たしていくのを肌で感じていた。行かなきゃいけない。そう思った時には、自然と足取りは速度を速くしていた。近くに連れて強さを増す違和感。前方にくっきりと家が見えてきてやっと、俺は正体に気付く。玄関のドアが、少しだが空いている、ただそれだけだった。いや、家族に限ってドアを閉め忘れるなんてあるだろうか。そして、それが分かった途端に心拍が上がり額を汗が伝う。森がざわざわと震え、俺に何かを伝えようとしている気がした。体とは逆に脳はひどく冷静に状況を分析し、ドアをゆっくりと開ける。最初に目に入ったのは、真っ赤な床。ここではまだ、俺には何なのか分かっていなかった。そしてすぐに目に入るのは、見慣れた作業履と、ズボン。それらは地面に横たわって置いてある。それでは親父が倒れてるように見えるし、床の赤さと相まってそれはまるで……
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