第1話 樹木屋

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これは、小さい頃に親父から話してもらった【禁呪の森】の起源と、親父の持つ特殊な能力についての話だ。 【禁呪の森】は20年前にはまだ存在せず、ただの更地だった。たまたま親父がそこを通った時、親父が踏みしめた大地には木が育ち、あっという間に1つの森が完成した。森は1つ分の都市程の大きさがあり、面積を測量するのにも相当な労力がかかった。驚く事はそれだけではない。その森で育った木を切ってみると、その木を切った部分からまたすぐに木が生え始めた。切っては生え、切っては生える。この自然界の理を完全に無視した森は、いつしか【禁呪の森】と呼ばれるようになる。親父が出来るのはそれだけでなく、思ったように木を変形することもできた。親父はそれを見て、利用すればこれ以上ないほど楽に稼げるんじゃないかと思った。 そこから話は早かった。親父は『樹木屋』と彫られた大きな看板を持ち前の能力で木に固定すると、スピーカーを手に持ちながら車で街中を駆け回り 「無限にとれる木はいかが~!?」 と叫びまわった。 途端にその噂は町、都市へと広がっていき、本当に一瞬で木が育つ光景を目撃した人達から、さらに情報拡散は加速していった。
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