プロローグ

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圭はご馳走様と合掌するとスイムウェアとキャップ、ゴーグルをすべてチェックしてから手慣れた様子でタオルで包み、スイミングバックにねじ込む。 『___さて続いては、一昨日から予想されている危険生物警戒情報です。本日の警戒区域は、流部町(るべちょう) 東地域。流部町東です。流部町東からまだ避難していない町民の皆さんは、落ち着いて速やかに次の地域に避難してくださ___』 無機質なアナウンサーの声が断たれる。液晶に薄暗く食卓が映った。テレビリモコンの主権は常に涼介にある。先に朝食をとった涼介は、廊下に続く戸を開く。 「昨日も言ったけど、出張で五日間は留守だ。鍵閉め忘れんなよ。」 「あい~」 皿洗いに施錠、先程から言われなくてもやるのに…と圭は辟易していたが一応返事をした。しばらくして自分の顔が綺麗に映る程度に食器を洗い終わると、炊飯器に残ったご飯をラップによそっておにぎりにし、保温を切った。 テレビの横に小さく、どこか申し訳なさそうに備え付けられた仏壇。そこにこれまたどこか憂いを帯びた表情で母 瑠美の遺影が立てられている。 少し目をやって、圭は家を出た。
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