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第一話 『高慢Ⅰ』
この国は20年前から狂い始めた。中絶、離婚の禁止により強制的な出生率の引き上げが行われ、多くの「望まれない命」を生み出した。親から愛情を与えらなかった子供たちはやがて社会に対し強い憎しみを持つこととなり、多くの犯罪を誘発した。
そして……事件は今日も起こる。きっと、明日も明後日も。
真夏、照り付ける日差しの中、僕……新米刑事の藤井 慶介は事件の現場……人気の少ない、小さな公園の寂びれた女子トイレの中に立っていた。夏の蒸し暑さと、目の前の凄惨な光景に僕はとても嫌な汗をダラダラと流してながら、ただ茫然と立ち尽くしていた。
死臭と汚臭が蔓延する空間、呼吸をすることすら悍ましく感じる。
「こりゃ、酷いな……まだ幼いじゃないか」
「これ……どうなってるんですか……うっ」
僕の目の前には、遺体が横たわっている。下腹部を大きく裂かれた幼い少女の亡骸。幼い少女の遺体がトイレの床に放置されていると通報が入り、今に至る。
目の前の凄惨な光景を直視できず、僕は口元を抑えながら必死に嘔吐をこらえる。
「無造作に腹を裂いて、子宮だけ引き抜かれてる。全く、ひでぇ事しやがる」
大きく裂かれた腹の中には、不自然な肉の空洞があった。そこは本来、子宮が位置する部分だ。
僕の上司である風間刑事は目の前の光景を淡々と分析し、解説する。これがベテラン刑事の貫禄というやつなのだろうか。
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