第三話 『高慢Ⅲ』

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両親が熟睡する中、頸動脈を的確に切り裂き殺した。警察が到着居た時には現場はまさに血の海で、返り血を浴び、茫然とした揚羽がそこにはいた。 そして揚羽は警察に保護され、再教育と言う名の洗脳を受けて今の「SC計画」の第一号として捜査に利用されている。 揚羽は、被害者でもあり加害者でもあるのだ。双方の経験があるからこそ、彼女は限られた情報からでもその犯罪の細部までを分析することができる。 「藤井君、藤井君!」 「え、ああ……何?」  揚羽の声で我に返る。運転中とはいえ、高速道路で平坦な道のりが続いたのでつい考え事としてしまった。気付けばもう三十分近く運転していた。 「何じゃない、運転中に何をぼーっとしているんだ。昼食はどこでとるんだとさっきから再三聞いているのに、君ときたら阿呆みたいに口を開けながらぼーっとして……」 「ごめん、考え事してて……揚羽ちゃん、お昼は何か食べたいものはある?」  車を走らせながら、僕は揚羽に明るい口調で取り繕う。 「何だい、また私の好みでいいのか。いつもいつもと思うから今日くらいは君に選ばせてやろうと思ったのに……まぁいい、意見が無いのならとりあえず都内の高級店を片っ端から巡ろう! どうせ経費で落ちるんだ、遠慮する必要はない」 「そう……だね」     
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