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それもいいかもしれない。現場からなるべく離れた場所で美味しい食事を楽しむ。これ以上ないリフレッシュになるだろう。
だが、僕はきっとどれだけ現場から離れた高級料理店で食事をしようと、現場の死臭を忘れることはできないと思う。
「……ああ、それもいいかもね。でも、やっぱりこの近辺にしよう。あまり遠くに行くとカンナさんの所に行くのが遅くなる」
結局、どこに行って何をしようが一度脳裏に刻み込まれたあの凄惨な光景は簡単には剥がれてくれない。最終的には、時間が記憶を薄めてくれることを待つしかないのだろう。
もしくは、僕も『カンナさん』に頼んで一緒に面談を受けさせてもらうべきなのかもしれない。
「……また今日もあの教会へ、あの胡散臭いシスターへ会いに行かなければならないのか? 私は生まれてからずっと無宗教だというのに」
カンナさんの名前を聞いた途端、揚羽はむくれる。
カンナさんとは、この近辺の教会に務めるシスターの名。僕たちは理由あって定期的に彼女の元を訪れなければならない義務がある。
「帰ってもどうせ部屋に籠ってゲームするだけだろう? なら、カンナさんと面会することの方がよっぽど有益だと思うけれど」
僕はともかく、揚羽はカンナさんとは馬が合わないようであまり乗り気ではない。
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