第一話 『高慢Ⅰ』

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 けれど、僕は何年経ってもこんな風に平然と遺体に向き合うことは出来ないと思う。凄惨な遺体や事件に対し、今の様に吐き気を覚えながら向き合い続けるんだろう。  それにさえ慣れてしまったら、もう人間ではいられなくなってしまう気がするから。 「何で、こんな惨い事を……」 「さぁ、世の中には俺たちの予測の範疇に収まらない狂人が大勢いる。それを俺たち凡人が理解しようだなんて、無理な話だ。もし、それが理解出来ちまった時は……もう、そいつは凡人ではいられねぇ。狂人の同類だ」  僕の怒りの声に風間は静かに答える。余計な感情を持たず、ただ捜査に邁進して犯人を逮捕しろ、というのが風間から教わった事だ。  それが刑事の仕事なのだから、本来はそうあるべきなのかもしれない。けれど、僕はどうしても事件の被害者や犯人に対して余計な肩入れをしてしまう癖があった。なぜ、どうしてを考えるのは俺たちの仕事じゃない、といつも風間には説教をされてばかりだ。 「狂人の思考まで理解する必要はねぇ。ただ、俺たちは犯人を捕まえて牢獄にぶち込めばいい。狂人の思考やら動機を分析するのは、その役目を担った人間がやれば良い」 「ええ……けれど、その役目をあんな子供に担わせるこの国も、僕たちも……既に狂っている」    与えられた役割は、それを担った人間がこなせばいい。何の間違いもない。     
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