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けれど、僕は何年たってもこんな風に平然と遺体に向き合うことはできないと思う。凄惨な遺体や事件に対し、今の様に吐き気を覚えながら向き合い続けるんだろう。
それにさえ慣れてしまったら、もうそれは人間ではいられなくなってしまう気がするから。
「何で、こんな惨いことを……」
「さぁ、世の中には俺たちの予測の範疇に収まらない狂人がわんさかいる。それを俺たち凡人が理解しようったってそりゃ無理な話だ。もし、それが理解出来ちまった時は……もう、そいつは凡人ではいられねぇ。立派な同類だ」
俺の怒りの声に、風間は静かに答える。余計な感情を持たず、ただ捜査に邁進して犯人を逮捕しろ、というのが風間から教わったことだ。
それが刑事の仕事なのだから、本来はそうあるべきなのかもしれない。けれど、俺はどうしても事件の被害者や犯人に対して余計な肩入れをしてしまう癖があった。なぜ、どうしてを考えるのは俺たちの仕事じゃない、といつも風間刑事に説教をされてばかりだ。
「理解する必要はねぇ。ただ、俺たちは犯人を捕まえ、牢獄にぶち込めばいい。犯人の思想やら動機を分析するのは、その役目を担った人間がやればいい」
「ええ……けれど、その役目をあんな子供に担わせる僕たちも、既に狂人ですよ」
与えられた役割は、それを担った人間がこなせばいい。何の間違いもない。
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