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僕は飴玉を舐めながら遺体を物色する少女・揚羽に恐る恐る声を掛ける。別に彼女は野次馬でもなく、迷子でもない。正式な警察組織の一員として現場に足を踏み入れているのだ。
「……三人連続同じ手口での殺人……無造作に腹を裂き、子宮だけを抜き取っていく……同一犯が一つの目的のために行っている殺人のようね。あと、ちゃん付けはやめてと言っているでしょ。子ども扱いされているようで腹が立つわ」
「いや、十分に子供じゃないか……」
少女は表情を歪めながらも、分析を進めてくれていた。彼女の行う分析とは、鑑識などが行う科学的なものではない。
彼女は、現場の空間・遺体に残された犯人の『残り香』から犯人の思考を読み取り、精神的に『同調』する事が出来る。そうする事で犯人像やその動機を割り出し、逮捕まで導くのが揚羽の仕事だ。
揚羽は裂かれた腹部を指差しながら、説明を続ける。
「犯人の目的は殺人そのものではなく、子宮という器官を手に入れる事……だと推測するわ。見て、腹の裂かれた傷はかなり乱暴で、雑。だけど、子宮周りの肉や臓器の切断面はとても綺麗なの。子宮だけは傷付けないよう、細心の注意を払っている」
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