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揚羽の指の先に視線をやると、確かに子宮周辺の切断面は綺麗というか、丁寧な印象を受けた。腹部の傷は無理矢理引き裂いたという印象だったが、それに比べれば明らかに綺麗な傷口だ。
「これは犯人の関心が子宮にだけ向けられている現れ。犯人にとって、この子の身体は子宮を収納するための箱に過ぎない。中の宝を取り出すのに、犯人は箱を壊す事を躊躇わなかった訳ね」
犯人にとって被害者たちは子宮を収納する箱にでしかなかった。だから、目的を達成するためなら幼い少女たちを殺す事をなど躊躇わない。ただ、中身の宝を持ち出す時だけは丁寧になっている……揚羽はそう言いたいのだろう。
「それに、遺体の『残り香』からは犯人の『憎悪』はほとんど感じられない。犯人の目的はあくまで子宮を彼女たちの肉体から切り離す事で、それ以上でもそれ以下でもないのよ」
揚羽はその『同調』の能力を用いて現場や遺体の『残り香』から犯人の強い『感情』を読み取ることが出来る。怨恨などによる殺人の場合、犯人の強い憎悪や殺意が現場や遺体に香りとして染み着いているのだという。
だが今回、犯人の『感情』は被害者に向けられたものではなかった。それが向けられているのは持ち去られた子宮という器官に対してのみだというのが揚羽の見解だ。
「……それで、犯人像は浮かんだのか? 『感情』が読み取れないのなら、お前でもお手上げだろう」
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