第二話 『高慢Ⅱ』

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 揚羽の指の先に視線をやると、確かに子宮周辺の切断面は綺麗というか、丁寧な印象を受けた。腹部の傷はどちらかというと無理矢理引き裂いたという印象だったが、それに比べれば明らかに子宮を余分なパーツから切り離す際にできたであろう切断面は、明らかに綺麗だった。 「これは、犯人の関心が子宮にだけ向けられているから、子宮を取り出す際に付けた傷跡だけは異様に丁寧なんだ。犯人にとっては、この子の身体は子宮を収納するための箱に過ぎない。中の宝を取り出すのに、犯人は箱を壊す事を躊躇わない……」  犯人にとって被害者たちは子宮を収納する箱にでしかなかった。だから、目的を達成するためなら、幼い彼女たちを殺す事をなど躊躇わない。 「それに、犯人の『負の感情』は被害者たちからはほとんど感じられない。彼の目的は、子宮を彼女たちの肉体から切り離した時点で達成されていると考えられる」  揚羽は、その『同調』の能力を用いて現場や遺体に残された犯人の強い『感情』を読み取ることができる。怨恨などによる殺人の場合、犯人の強い憎しみや殺意が現場や遺体に染み着いているのだという。揚羽はその『感情』を過敏に感じることができるという。  だが今回、その『感情』は被害者たちには向けられていなかった。それが向けられているのは、持ち去られた子宮という器官に対してのみだというのが揚羽の見解だ。 「……それで、犯人像は浮かんだのか? 『感情』が読み取れないのなら、お前には何もできないだろう」     
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