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揚羽の頭上で、風間が皮肉っぽく言う。彼もこの『SC計画』には嫌悪を示していた。犯罪被害者の、しかも幼い子供を利用するこの非人道的な計画に。
だからこそ、風間は揚羽が捜査に参加する事を快く思っておらず、揚羽に対する当たりも若干強い。
対する揚羽も風間の事が苦手らしく、捜査の際にはどちらかというと僕の方に懐いている。
「……そんな事はないわ、風間刑事。確かに『憎悪』は感じられないとは言ったけれど……その代り、僅かに……遺体には『憧れ』に近い感情の残り香を感じたの」
「憧れだぁ? どういう事だ」
揚羽の見解に、風間は怪訝そうな表情を浮かべる。風間は揚羽を未だに信用してはいないようだ。いくら揚羽に実績があると言っても、風間にとっては子供の妄言にしか聞こえないのかもしれない。
「犯人は、被害者たちに憧れていた……彼女たちの様になりたくて、憧れて犯行に及んだ。少なくとも犯人はそういう思考を持って犯行に及んでいるんだと思う。まぁ、詳しい事は捕まえてみないと分からないけれど……」
揚羽はこうも簡単に犯人像を予測する。
最初はこんな事だけで犯人像が予測出来るのかと僕も疑っていた。
けれど、揚羽は確かに読み取るのだ。遺体、現場に残されている犯人の『残り香』から、犯人と同じ視点に立ち、『同調』する。そして、犯人像を導き出す。
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