第二話 『高慢Ⅱ』

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 それは、凄惨な犯罪の被害を受け続けてきた揚羽だからこそ、犯罪者の思想に寄り添う事が可能なのだ。 「犯人は彼女たちを愛していたけれど、あくまで第三者、傍観する存在……その疎外感が、犯人を狂わせた……藤井君、被害者たちの共通点……思い出してみたまえ」  揚羽の分析が止まることは無かった。一度彼女が『同調』すれば、そこで事件の全貌が明らかになると言っても過言ではない。 「3人とも、同じ小学校に通っていた……」 「学校の教員……子供たちを育み、愛すべき立場。けれど、あくまで第三者の他人、傍観者。被害者たちが通っていた学校の関係者を当たってみるといい。特に……両親と問題を抱えていたり、既に別れを経験している人物を重点的に調べていくといい」  揚羽は、この短時間で容疑者を小学校関係者にまで絞り込んだ。しかも、両親と何らかの問題を抱えている人物、と明確な制限付き。  通常の捜査なら、ここまで行きつくまでにどれだけの時間がかかっただろう。けれど、彼女がいればこんなにも簡単に……。 「なぜ両親との関係性が重要なんだい? 教えてくれるかな」  膝を抱えてしゃがみ込み、揚羽の視線に合わせて声を掛ける。 僕はなるべく揚羽を一人の子供として扱おうと努力している。何故なら、大半の大人が彼女を道具として認識しているからだ。     
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