第三話 『高慢Ⅲ』

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第三話 『高慢Ⅲ』

  漆ヶ谷 揚羽……彼女は望まれない命としてこの世に産み落とされ、そして凄惨な過去を経験した。  揚羽は両親が互いに高校生の頃に産まれた。子を中絶することは法が許さず、揚羽を妊娠した時点で出産する以外の選択肢は揚羽の両親には無かった。  そうして産まれた揚羽に、両親は愛情など持ち合わせていなかった。学校を追われ、更に周囲からも冷遇される日々……両親の溜まりに溜まった鬱憤は、子である揚羽に暴力という形で発散された。  望まれなかった子供への虐待……この国では最早珍しくもない話。これだけなら、揚羽はまだ幸せだったのかもしれない。  やがて揚羽の両親は生活に困窮し、揚羽を殺す事を考える。だが、寸前で思い留まった。それは、揚羽を有効利用する手立てを考えついたからである。  両親が我が子に強いるには、あまりにも残酷な手段だった。揚羽の両親は、幼い揚羽に売春まがいの真似をさせ、そこで収益を得ることを考え、実行させた。  幼い揚羽が相手をしたのは、同い年の少年から年の離れた老人まで……数百人単位だった。 そんな地獄の日々の中、揚羽の心が壊れるのにそう時間はかからなかった。ある日の深夜、揚羽は自身の両親を殺害した。     
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