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第四話 『高慢Ⅳ』
それから二十分程度だろうか、住宅街に佇む寂びれた教会が視界に入り、僕は車を駐車場に止める。
駐車場には車は僕以外いない。お世辞にも人気のある教会とは言えない。本来、教会とは賑わっている場所ではないにしろ、僕は今までで一度も僕ら以外の訪問者を見たことが無い。
重苦しい扉をゆっくりと開けながら、暗い礼拝堂の中に向かって声を掛ける。
「こんにちはカンナさん。今、良いですか」
「あら、藤井君。今日は早いのね」
暗闇の中から柔和な声が返ってくる。そして、ゆっくりとこちらに向かってカンナさんは歩きはじめる。
「ええ、揚羽ちゃんの活躍で随分早く片付きまして……後処理は任せて抜けてきちゃいました」
「あら、やっぱり凄いのね揚羽ちゃんは」
そして、僕らの目の前にカンナさんが現れる。漫画で見るようなシスターをそのまま具現化させたような服装。それに加え、クリーム色の明るい長髪に豊満な身体つき、まさに聖母とはこの人のためにあるような言葉ではないかと錯覚してしまいそうなほどだ。
「お疲れさま、揚羽ちゃん。あまり長居はできないのだろうけど、ゆっくり休んでいてね?」
そう言いながらカンナさんは揚羽を自分の胸元に抱き寄せる。
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