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フー太と呼ばれた鳥も器用に2本の翼を使って湯呑みを持ち、お茶を飲む。
「いや、例年よりちと早いな。お主も元気そうだな」
「おかげさまで」
成美はニコリと可愛い笑顔をする。それを見たフー太は、まるで孫を見ているかのように嬉しそうな顔をする。
「お主の顔も見れたし、そろそろ行くかな。茶ごちそうさん。」
そんな成美を見ながら、お茶を飲みきったフー太は翼を広げる。
「もう行かれるのですか?旅の話でも聞かせてくれるのかと思っておりましたが?」
成美は少し残念そうな顔をしている。
「また今度だな。この国全体に春を知らせる風を吹かせにゃならんからな。」
羽をパタパタと動かし、宙を舞った。
「春一番もお忙しいですね」
成美はフー太を見上げる。見上げた為、少し太陽が眩しく感じる。
「一時のことよ。ではまた会おうぞ。」
再び風が吹き荒れると、フー太は既に居なくなっていた。
成美は残ったお茶を飲み干すと、空になった湯呑みをお盆に乗せ、キッチンの流し台へと運んだ。
その後、全国的に強い風が吹き、気温も徐々に上がって新緑が芽吹くとと共に、人々は春の訪れを感じ取った。
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