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弦音は響かない
好き。
嫌い。
普通。
無関心。
他人に感じる感情は他にも色々あるけれど、こと恋愛においての感情は少しでも好きという感情がないと成り立たない。
だから、アイツの感情が読めなくても、私が“彼女”でアイツが“彼氏”である限り、好かれているのだと思っていた。
「付き合って」と告白してきたのはアイツ。
その時、私にはアイツに対して好きも嫌いもどちらの感情もなかった。単にクラスメイト。ただそれだけだ。けれど、好意を持たれていることは素直に嬉しかったから付き合うことを決めた。
なのに、何故だろう。
一緒にいてもアイツの――島村遥の気持ちはどこか遠くにあるような。
けれど、それが何なのか当然わかるはずもなく、付き合い始めてまだまもないからだと、小さな違和感を感じながらもそう自分を納得させていた。
弓道着に身をつつみ、霞的へ矢と視線を真っ直ぐに向ける遥を見ながらそんなことを考えていると、横から「ね、島村ってどう?」と親友である風見彩香が耳打ちしてきた。
「どうって?」
「付き合い始めたんでしょ? 結花と島村」
「ああ、うん。そうだけど」
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