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「人は心が傷付くたび、深刻なダメージを受けた部分を外に出そうとする。涙を流したり、誰かに話をしたり、そういう方法で。そうやってある程度は、心は癒えるようにできている。……でも、それがうまくいかなかったり、自分ではどうにもできない傷もある」
神様はそう言うと、ついさっき拾ったばかりの黒い塊を私に見せた。
「そういう時は、こうやって傷んだ部分を無理やり、外に出してしまう。そうすると一時的に心は軽くなって、傷を忘れることもある。でもその分、心は擦り減ってしまう。外に出した心は放っておけば風化して消えてしまうけど、それを拾って休ませて、また人に返すのが僕らの仕事」
「そんなの、放っておけばいいじゃない。どうして、傷んだ心を拾って休ませる必要があるの?」
私がそう聞くと、神様は表情を変えずに言った。
「人の心は有限だから。こうやって欠片を拾い集めてあげないと、どんどん小さくなってしまう」
「それは、人の勝手じゃない。心が小さくなればなるほど、受ける傷も小さくなるんじゃないの?」
「小さくなるよ」
神様は淡々と言った。
「それなら、小さくても良いじゃない。どうして元に戻す必要があるの?」
「確かに、心が小さくなれば、傷を受ける面積は減って、辛いことは減るかもしれない」
「それは、良いことなんじゃないの?」
そう聞くと、でも、と神様は続けた。
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