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テーブルの方に向かって行くと、既にパラソルの設置は終わっていて、王雅が沢山並べられた簡易椅子のひとつに座って、ぼんやりと空を眺めていた。
ちょっとお疲れのようね。大丈夫かな。仕事、忙しかったのかしら。
「王雅」声を掛けて覗き込んだ。「コッチの方、もう用意終わったんだ。早いね。ありがとう。一人で大変だろうから、手伝おうと思って来たの」
王雅は無言で私をじっと見つめた。
あまり見つめないで欲しい。ドキドキしてしまうから。
「どうしたの、王雅、きゃっ」
突然抱き寄せられた。「充電させろ。暫くお前に逢えなかったから、パワーがねーんだよ」
「ちょ・・・・ちょっと、こんなところで・・・・」
まりなちゃんに見られたら、なんて言われるか!!
本当に止めて欲しい。
「うるせえ。俺が、どんなにお前に逢いたかったと思ってんだ――・・・・」
王様の、端正な顔が近づいた。
吸い込まれそう。
あ、ダメ。これ、絶対、キスされるっ!!
「ほ、ほらっ、もうこっちは準備できたし、バーベキュー始めるから、アンタも来なさい」
すんでのところで振りほどいた。ああ、危なかった。
ごまかすように、食材がてんこ盛りのところまで引っ張って連れて行った。
みんながいたら、キスなんかできないわよね。
ちょっかいでこんな貧乏女に、挨拶するみたいにキスするの止めて欲しい。
それよりも、自分の心が王様の一挙でドキドキするのが赦せない。
こんなセクハラ男、絶対好きじゃないし。
何でドキドキなんかするのよっ! わけわかんないっ!!
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