スマイル16・王様とキス

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 電池が切れてしまったので、今後の撮影は断念して、仕方なくデジカメは日焼け止めの為に着用しているUVパーカーのポケットに押し込んだ。  お泊り保育の写真は集合写真すら撮れないのは残念だけど、新しいカメラを買うお金も無いし、大切な充電器を壊したり失くしたりするといけないから、持って来なかったのよね。電池が切れちゃったのは、私の不注意だったから仕方ないわ。後でカメラを落としたりしないように、ちゃんと片づけておこう。  調理場まで戻って、江里ちゃんが焼いておいてくれたお肉や野菜をお皿いっぱいに乗せ、王雅の元へ向かった。 「お待たせ。遅くなってごめんね」 「おう、待ってたぜ」  王雅がお皿を受け取ってくれて、テーブルの中央に置いた。お皿の中身が空になっている子供たちの前に、冷めている方のお肉や野菜をよって、専用のハサミで小さく切って置いてくれた。 「慣れたものね」  本当に先生みたいだわ。  便利屋というかオーナーにはお給料も払わなくていいから、ずっと無償で助けてくれないかしら。  まあ、貴方みたいな男、この施設――というより私――に飽きたらもう私達の事は忘れて、二度と施設にも寄り付かなくなるでしょうけどね。
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