スマイル16・王様とキス

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  「バカッ、なんでこんなコトするのよっ」  あくまでも小声でしか文句が言えない。それを解っているから、王雅はこんなところで私に手を出してくるんだわ。  同意も無く、本当に最低ね。  いや、同意があればいいってモンじゃないんだけど。 「何でするのかって? 好きだからに決まってんだろ。お前が好きだからだ。キスもしたいし、お前を抱きたい。お前が欲しい。それじゃダメなのかよ」 「わっ・・・・私は、そんな不愉快な事、したくない」  抱きたいと言われて、契約の事を思い出した。 「なんで不愉快なんだよ」 「・・・・私の口から、それを言わせたいの?」  思わず顔が歪んだ。 ――美幸さん。  耳元で囁かれた、花井の声を思い出した。  施設の為とはいえ、身体を売ったあの日の事。  私の名前じゃなく、美幸おかあさんの名前を呼ばれ、身代わりに、花井に抱かれたあの夜の事――  何時までも美幸おかあさんに執着して、私を身代わりに愛して、本当に最低なクズみたいな男に身体を撫で回された感触は、今でも何かの拍子に時々こうやって思い出してしまう。鳥肌が立った。  初めての交わりは、不愉快でしかなかった。  できればもう二度としたくない。
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