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「バカッ、なんでこんなコトするのよっ」
あくまでも小声でしか文句が言えない。それを解っているから、王雅はこんなところで私に手を出してくるんだわ。
同意も無く、本当に最低ね。
いや、同意があればいいってモンじゃないんだけど。
「何でするのかって? 好きだからに決まってんだろ。お前が好きだからだ。キスもしたいし、お前を抱きたい。お前が欲しい。それじゃダメなのかよ」
「わっ・・・・私は、そんな不愉快な事、したくない」
抱きたいと言われて、契約の事を思い出した。
「なんで不愉快なんだよ」
「・・・・私の口から、それを言わせたいの?」
思わず顔が歪んだ。
――美幸さん。
耳元で囁かれた、花井の声を思い出した。
施設の為とはいえ、身体を売ったあの日の事。
私の名前じゃなく、美幸おかあさんの名前を呼ばれ、身代わりに、花井に抱かれたあの夜の事――
何時までも美幸おかあさんに執着して、私を身代わりに愛して、本当に最低なクズみたいな男に身体を撫で回された感触は、今でも何かの拍子に時々こうやって思い出してしまう。鳥肌が立った。
初めての交わりは、不愉快でしかなかった。
できればもう二度としたくない。
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