2101人が本棚に入れています
本棚に追加
「以前、懇願されて仕方なくサトル君を一度、期限付きで一時帰宅させたことがあるんだけど、家で酷い暴力を受けて、また、施設に戻ってきたのよ。絶対にサトル君を傷つけないって、私とあんなに約束したのに――お母さんの言葉を信じた事、後悔したわ。だからもう、きちんとした手続きを踏まない限り、一時帰宅もさせない、二度とサトル君を返さない、って決めたのよ」
「そうだったんだ。サトルにそんな辛い過去があったんだな。明るく元気だから、全然気が付かなかった」
「そうなの。ここ暫く平気だったんだけど、お母さんが来たから、辛かったことを急に思い出しちゃったんだと思う。だから、サトル君が凄く信頼してる、王雅が居てくれて良かったわ。私一人じゃ、あんな風に治める事が出来なかったと思う。サトル君を助けてくれて、本当にありがとう! 王雅にお礼、ちゃんと言っておきたかったの」
頭を下げた。
貴方がいてくれて、どんなに私達が助けられたか知っておいて欲しいから、精一杯のお礼でその気持ちを伝えた。
「言っただろ。お前が困ったら、俺が助けてやるって。俺を頼れ、美羽。遠慮するな。一人で抱え込むには、限界あんだろ」
「・・・・王雅、ありがとう」
お前が困ったら俺が助けてやるなんて、女性の扱いには慣れているから、女性が喜ぶセリフなんか、朝飯前なんだろうけど。
もし今、強引にキスされたりしたら、流石の私でも貴方にクラっと来て、抵抗できないと思う。
どうしようと思ったけど、手は出されなかったので、ほっとした。
最初のコメントを投稿しよう!