スマイル18・王様子供を守る

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 チイちゃんは王雅の事を『おーたん』と呼ぶのよ。初めて聞いた時は、思わず笑ってしまったわ。  王雅はそんな面白い呼び名でも怒りもせずに、チイちゃんにとろけそうな笑顔を見せているの。チイちゃんの事が可愛くて仕方ないみたい。 「チイ。約束する! 近いうちに来るから! とりあえず仕事休みの次の土曜日! 絶対来てお前といっぱい遊んでやるから! なっ? 今日は・・・・マジでごめん! 俺も帰りたくねーけど・・・・チイと一緒にいたいけど・・・・帰らなきゃいけねーんだ。ごめんな」  だんだん王雅も悲しそうな顔になっている。チイちゃんと離れたくないのね。 「ううっ・・・・おーたん・・・・」 「さあ、チイ、いい子だ。美羽先生トコ行こうな」王雅がチイちゃんを抱き上げてくれて、私に託してきた。「美羽、俺がまた来るまで、チイを・・・・頼むな。とりあえず次の土曜日、来るから」  真剣な顔で言う王雅の顔は嘘偽りなんか何も無くて、本当のチイちゃんのお父さんみたいに見えた。  愛しい我が子と別れ際の光景。何度も見て来た。  酷い目に遭って施設に来る子供たちばかりじゃないの。やむを得ない事情があって私の所に仕方なくいなきゃいけない子もいるわ。チイちゃんもそう。今は訳合っておかあさんと離れて暮らさなきゃならないだけ。  お別れって、辛いわよね。
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