2人が本棚に入れています
本棚に追加
+01.天才と天災。
夢を努々、侮っては成らぬ。
夢は距離も時間も超えるモノ。
総てはその想いの重さ。
『まだ起きねぇのか、主人』
「…クロ…。」
目を開けたばかりの僕に、満面の笑みで覆い被さっているのは、僕が幼い頃、弱って居たのを拾って怪我を治して以来、懐いて離れない黒狐のクロだ。
『今日も起きるまで起こさなかった。褒美に撫でてくれ』
取り敢えず僕がクロと呼んでるだけで、別の真名が在り、それを暴いたら、本来の能力を制限無しで使えるのだろう。
「…また結界壊した…。」
『危険な依頼から、主人を守護る為だ』
今のこの子に出来るのは、凡ゆるモノに化ける事、簡単な結界を壊す事、低俗な形を保てぬモノなら壊す事。
完全に人間に化ける気が無いので、耳と尻尾を出したままにしている。
真名を暴き、使役したら、それ以上の事もさせられるだろうが、させる気には成らない。
『俺は主人の所有物だからな』
それが主従関係の良い所だ。
『御早う御座います、主人。入っても宜しいでしょうか?』
障子に薄っすらと、三つ指をついて朝の挨拶をする、人間に化けた狐の影が映る。
最初のコメントを投稿しよう!