+01.天才と天災。

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「おはよう、ギン。御入り。」 『はい』 『ふすー…』 正座のまま、静かに障子を開けた。 朝日が部屋に溢れる。 『今朝は四半刻程、長う御座いましたね。夢視(ゆめみ)で依頼でも御座いましたか?』 「依頼は無いけど、色んなのから呼ばれた。」 ギンはこの屋敷に憑いていた銀狐だ。 見た目は平安時代の衣装を着た、銀髪のおかっぱの少年。 クロは、ぼさぼさの黒髪に、痩せている大きな躰。 2人とも、所謂、狐は狡賢いと言う所は特に無い。 一般に善狐(ぜんこ)は、主人(あるじ)と決めた相手には、忠実で情深く、律儀で、親切で、礼儀正しい。 但し、クロはそんなに、礼儀正しくない。 個体差は在る。 『取り敢えず、夜具から出てくださいまし。畳みます』 ギンはクロには眼もくれず、静かに言った。 「クロ、退いて?」 『嫌だと言ったら?』 『退け、馬鹿狐。主人(あるじ)から離れろ』 ずっと謎なのだが、クロとギンは仲が悪い。 「ギン、言い過ぎだよ。」 『そうだぜ、先輩』 『私よりも図体デカい(わっぱ)が!』 このやり取りも毎日。 ずっと変わらない、変わって欲しくない、僕の日常。 「ほら、クロ、退いて。」 渋るクロを退かして、ゆっくりと起き上がった。 「兄様は?」     
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