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「あの…優香……は?」
俺が声をかけると、ゆうかのお母さんはバッと顔を上げて俺の手を握った。
「どうかこの子に、最後の言葉をかけてあげてください」
涙でぐちゃぐちゃの声だったが、確かにそう言ったように聞こえた。
「えっ…?最後…?」
現実が受け入れられない。だって…1週間前までは普通に話してたじゃないか…それがいきなりこんな、え…?
「おい優香…うそだよな!!何か言ってくれ!!」
感情を抑えられない。子供のように泣きながらまくし立てる。
その時、優香の右手が少し動いたように見えた。
俺はとっさにその右手を掴み、胸元に抱き寄せた。
「たい……が…?」
優香が細い声で俺の名前を呼ぶ
「そうだ!たいがだ!大丈夫なんだよな優香!」
「あの…ね、ずっと……言いたかった…こと…が…あって…ゲホッゲホッ!」
優香が強く咳き込む
「ゆっくりでいい…なんでも言ってくれ」
俺は、優香の背中をさすりながら続きを促した。
「私…ね?たいがの…こと……ずっと…好き…だっ…た……」
今なんて?こいつが俺のことを好き?そんな…まさか……でもそれが本当ならっ!
「な、なら生きてくれ!俺のことが好きなら!!俺と付き合うためにも生きてくれ!!」
「俺だってずっとお前のことが………」
すっと優香の手から力が抜け、ベットにストンと落ちた。
「せめて最後まで……言わせてくれよ……」
あれ以来俺は彼女ができたことがない。少しでもあいつと似た特徴があると比べて涙が溢れてしまうからだ。失恋ってのは次への過程。確かにその通りだ思う。気持ちを伝えられる。それは本当に尊いことだから…伝えられずに終わる恋ほど虚しさの残るものはない。きっと俺はこれからも、恋はできない。
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