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まじゃ今日は口聞いてくれないかな…と思い1人で帰ろうとすると、昇降口で立ち尽くしている優香を見つけた。傘忘れたのか、どうしたもんかな……俺は優香の姿を後ろで眺めながら悩んでいると、優香がふとこちらを振り向き、バッチリと目があった。
「ああ~……入ってく?」
俺は早まる鼓動を抑えて出来る限り冷静に喋る。
「う、うん、いれてもらおうか…な?」
優香も声が多少上ずっている。一応傘に入れて一緒に帰ることにしたのだが、どちらも一言も話さない。すごく気まずい、いつもみたいに明るく挨拶してくれ優香…
「あの、さ…」
優香が途切れ途切れに喋り始める
「さっきの花火大会の件だけど、一緒に来てくれる?」
ドキッと心臓が破裂しそうなほど緊張してしまった。なんかデートに誘われてるような言い方して来るし、こいつは俺にそんな気ないはずなのに。くそっ…なんかこいつがしおらしいとテンション狂うな
「そんなに来て欲しいならいってやるよ」
「なんでそんな上から目線なのよー!全く失礼ねっ」
優香はそう言ってふんっと鼻息を荒らげる。
「はは、俺はそっちの優香の方が好きだよ」
「すっ…すすす、好きっ?!」
なんだよいきなりびっくりしたりした。
「え?うん、騒がしい優香の方が似合ってるよって…」
「なっ…んだ……びっくりしちゃった」
なんか今日の優香は感情の起伏が激しいな。まあでも、たまにはこんなのもいいな。
「じゃあ私こっちだから」
そう言ってダッシュで走って行ってしまった。
「おい傘は~?!聞いてない…」
また明日、あいつのテンションの高い挨拶が聞けるといいな。
でも、次の日も次の日も、あいつは学校に来なかった。流石に心配になって家に行くと、風邪を引いたらしくて、ずっと寝込んでるようだった。挨拶だけでもと思ったが、たいがにうつったら大変だから、と言ってた追い返されてしまった。花火大会当日には治せるとのことなので、あいつの挨拶を聞くのもそれまでの辛抱ってことか…。
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