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雨……花火大会当日。見事な土砂降りとなり、花火大会は中止になってしまった。でも、優香がそれならカフェでお茶でもしようと言うので、じゃあいつものカフェでね、というメールをして俺は身支度を整え始めた。正直気分は上がっていた。花火大会が中止になってまたあいつの挨拶がきけないのか、と残念だったが、あいつから誘ってくれたおかげでこうしてあいつに会いに行ける。
「さて行くか!」
足取り軽く玄関を出たところで、電話が鳴っていることに気づいた。やべっ8回も掛けてきてる。この番号…優香のお母さんだな。
「たいがくん!はやくこの町の病院に来て!」
電話に出た途端、大きな声でそう言われる。
「どうしたんですか?」
状況が読めずに聞き返す。
「ゆうかが……車に轢かれて今緊急手術中なの…」よく聞くと、ゆうかのお母さんは泣いているようだった。俺はゆうかのお母さんが言い終わる前に携帯を閉じると、とにかくはやく病院へと急いだ。焦って焦って仕方がなかった。なんでこんなことにならなきゃいけないんだ。あいつが一体何したっていうんだ。俺は…あいつの挨拶をもう一度聞きたかっただけなのに……涙で前が滲んでよく見えない。やっとの事で駅に着き、タクシーに乗り換える。病院前に着いた俺は、おつりをもらうのももどかしく、5000円札を叩きつけてそのまま走った。ナースから病室を聞き飛び込むと、ベットに横たわった優香がいた。隣ではゆうかのお母さんが泣いている。
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