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天帝さまが舞い降りた。
私、暁 麗の朝の日課は、朝6時に起床して身支度と朝食を終えた後、お寺の本堂内や参道を掃除すること。それが終わったら高校へ向かう。
私の家は帝釈天を祀るお寺で父は住職であり、私はその一人娘である。300年続くこのお寺を継承していくには身内ではない僧侶さんが継ぐのか、それとも私がお婿さんを迎えるのか、まだわからないけど、手伝える事はしていきたいと思っている。
朝食を終え、本堂内へ入る。私はこの空間が好きだ。荘厳と飾られた祭壇。凛として澄んだ空気。広がるお線香やお焼香の香り。
いつも通り、帝釈天の仏像に手を合わせてから掃除を始める。
目を瞑り、心を澄ませ、手を合わせる。
“ごとっ”
?・・・何の音?
音の方向は仏像・・・?
仏像を見やると、象に跨る帝釈天像が正面から右に向いたような・・・。
気のせいかな・・・きっと。
そうは思っても音と仏像の向きに気になりながら、床の拭き掃除をしていると───
『チリン・・・』
上の方から音がした。上を見上げると天井飾りが揺れている。
本堂は開け放たれているけど、風はそよいできていない。
なにっ・・・?
さっきの仏像のこともあって無視できない状況になってきた。
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