第三話 桜の願い

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  桜、キョトンと首を傾げる。 桜「なにをだ?」 オンラード「(無表情)俺に、盗賊の事を」   桜、しばらくオンラードを見つめる。 桜「(優しい笑み)ああ、聞かない」 オンラード「……なぜ?」 桜「信じているからな」 オンラード「(ピクリと反応)……信じる?」   オンラード、嘲笑を浮かべる。 オンラード「よくもまぁ、そんなことが言えたものだ」   桜、じっとオンラードを見つめる。 桜「お前は、私が信じられないか?」   オンラード、無機質な眼で桜を見る。 オンラード「……ええ、信じていません」 桜「……(苦笑い)ふふ、そう言うと思っていた。……きっと、お前は私以外のことも、信じていないのだろうな」   桜、悲しそうな笑顔。 桜「それでも、私はお前を信じているよ」 オンラード「……俺は、盗賊を殺しましたよ」 桜「……そうか」   桜、力強い笑顔。 桜「ありがとうファスマ。本当のことを話してくれて」 オンラード「(目を見開く)……なんですか、それは? 俺は、あなたを裏切ったのに、まだそんな……」 桜「言ったろう? 私はみんな信じている。だから、なにがあっても受け止める」   桜、狙いを定める眼でオンラードを見る。 桜「それに、お前は本当のことを話してくれたじゃないか。それは、お前が信頼に足る者だという何よりの証拠だろ?」 オンラード「……くだらない。そんなもの、何の根拠にもならない」 桜「……オンラード、もう少し寄れ」   桜、手招き。 オンラード「は?」 桜「いいから寄れ」   オンラード、一歩分ほど近づく。   桜、オンラードに飛びかかる。 オンラード「!(避ける)」   桜とオンラード、一メートルほどの間隔を保って硬直状態。 桜「(オンラードを睨み)避けるな!」 オンラード「(困惑)一体、何を……」 桜「抱きしめてやろうと思った」 オンラード「(驚き)な……」     ※   ※   ※   廊下の奥。   陰(景義)ピクリと反応。     ※   ※   ※
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