第四話 自覚と無自覚

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  ユキカ、オンラードから桜に振り返る。 ユキカ「……姫君? どうかなさいまして?」   桜、ハッとして笑顔になる。 桜「ん? 私がどうかしたか?」 ユキカ「(僅かに目を見開く)! ……いいえ、なんでもありませんわ」   ユキカ、面白そうに微笑む。 ユキカ「では、そろそろ街を見て回りましょうか」   桜、パァッと満面の笑顔。 桜「そうだな! さっそく行こう!」   桜、市へ走る。 景義「アッ……(桜を追いかける)」 ユキカ「あらあら、ふふふっ……」   ユキカ、歩いて追いかける。   オンラード、桜を見てため息をつき、後を追って歩く。 4 点描   様々な農作物が並んだ市。   桜、麦を売っている店の一つを覗きこむ。 桜「? なんだこれは?」 ユキカ「それは麦という穀物ですわ。我々の主食であるパンを作ったり、スープに使ったりもします」 桜「ああ、パン! 確かによく食べるな」   桜、屋台を見回す。 ユキカ「? どうかなさいまして?」 桜「米は? 米の屋台はないのか?」 ユキカ「(困った顔)米ですか? 恐らく流通はされていなかったと……」 桜「(ガックリうなだれ)そうか」 景義「(慌てて)アノ、米、恋シイ、分カルマス。元気、出ス下サイ」 桜「はぁ、残念だ。久々に米が食べたかったのだがな。それに……」   桜、オンラードをチラリと見て、サッとユキカに向き直る。 桜「それに、ユキカ達にもミギの国の文化を知ってもらいたかった」 ユキカ「それでしたら、私はもう存じ上げておりますわ」 桜「そうなのか?」 ユキカ「はい。ミギの国へ向かう船に、私も乗っていたことがありますの。米もその時に頂きましたわ」   景義、気まずそうに俯いている。 桜「(嬉しそうに)そうなのか! どうだった、米は美味かったか?」 ユキカ「はい、とても」 桜「(満面の笑み)景義!」   桜、バッと景義に向く。 景義「(ビクリと震える)ハ、ハイ!」 桜「聞いたか!? 米を美味いと言ってもらえたぞ! お前も嬉しいだろう!」 景義「(苦笑)……ハイ、勿論デス」 ユキカ「さあさ、日が暮れてしまわないうちに、他の所も見て回りましょう?」 桜「そうだったな。では行こう」     ※   ※   ※
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