2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ……あ? 俺……俺、いつの間に?」
「暖かいな……」
「え? え?」
「気持ちいいな……」
「……ケ、ケイト?」
「うん……泣きそうな声になってるね、どうしたの?」
「あ、あぁ、いや、えっと、ホントにケイトしゃべってるの?」
「……しゃべってないよ……あったかいなって思っただけ」
カミさんの言う、ケイトの気持ちが分かるようにするというのはこういうことらしかった。
「小さい頃ね、君の体暖かかったよ。今の君の体も暖かいね……」
ドキッとした。
心を覗かれてるのかと思った。
「お、俺もケイトの体、暖かくて、ずっとそばに居てほしいって思ったこと、何度もあった」
「そっか。遠慮したこともあったんだよね……」
「今のお前……」
体が冷たくなってきた。そう言おうとして止めた。
もうすぐ死ぬことを伝える気がしたから。
「……ねぇ」
「ん? な、何?」
「あたしがいなくなったら、君、一人きりでしょ? 君一人で大丈夫? 心配だな、あたし」
死ぬ間際まで心配かけさせて、どうしようもねぇな、俺。
「ガールフレンドの一人でもできるかと思って楽しみにしてたのになぁ」
「……ものの言い方が古いな」
悲しさを紛らわすように軽い冗談も言ってみる。
けど、声が微妙に震えてる。
口数が多くなると、いろんなことを知られてしまいそうだ。
「あたしが死んだら、君とずっと付き合えそうな人連れてきてあげよっか」
バレていた。
いや、自らの死を悟っていた。
そんな相手に気を遣わせてしまっている。
「お、おま……。……お前以上に素敵な相棒なんかいやしなかったよ」
「バカねー……。でも、ありがと」
「礼なら……死んだ後親父に言ってきな。お前を連れてきたの、親父なんだって」
「そっか。そこら辺は分かんなかったから……うん、言っとく」
日が昇る。
まぶしいが、日当たりがいい。
暖かな日差しを浴びている。
最初のコメントを投稿しよう!